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2024年5月10日(金)

主張

環境省マイク切り

水俣病救済 謝罪では済まない

 はなから被害者の声をまともに聞く気がなかったことは明白です。熊本県水俣市で1日に開かれた伊藤信太郎環境相と水俣病の被害者団体との懇談で、団体側の発言の途中で環境省がマイクの音を切って発言を打ち切らせた問題です。

 あまりに社会常識に欠けた無礼な対応が、患者団体だけでなく国民の怒りをよび、伊藤環境相は8日、水俣市を訪れ当事者に謝罪せざるを得なくなりました。

 報道によれば、環境省は事前に1団体の発言時間は3分と決めて団体側に要請し、超過したらマイクを切ることを決めていました。

■形つくるだけの場

 昨年も、実際にはしなかったものの同様の方針だったといいます。高圧的な感覚に驚くと同時に、環境省にとって、この懇談会は患者団体の声を聞いたという形をつくるだけの場だったとわかります。

 懇談会冒頭で伊藤環境相は、会は当事者の声を聞く「重要な機会」だとのべていました。本当にそうなら、国が一方的に3分という短い時間を設定すること自体、問題です。発言は8団体の予定だったといい、全体で30分にもなりません。

 マイク切りに、その場で団体側が抗議したのに対し、伊藤環境相は事務方の対応を確認もせず、改めるよう指示もしませんでした。この事態は事務方だけの責任ではありません。

 被害者団体が「被害者たちの願いや思いを踏みにじり、苦しみ続ける被害者たちの言論を封殺する許されざる暴挙」だと抗議し、大臣の謝罪と十分に時間を取った意見交換の場を設けるよう求めたのは当然です。

■被害拡大した責任

 大臣は謝罪に追い込まれましたが、ただ謝罪するだけではすみません。

 国や熊本県は遅くとも1959年には水俣病の原因がチッソ水俣工場の廃液だと認識できたのに、69年まで規制せず被害を拡大させたと最高裁が認定しています。しかし国は患者の認定基準を狭め、被害者切り捨て政策を続けてきました。

 2009年の水俣病特措法も患者を線引きし切り捨てるものですが、看板には国の責務として被害者の「あたう限りすべて」の救済を掲げ、国が長く適切な対応をせず被害の拡大を防がなかった責任を認めています。国は、その特措法が定める健康調査や疫学調査を行わず、被害の全容を明らかにするのを怠り、多くの未認定患者を残してきました。重大な責任を負いながら、課された義務を果たしてこなかったのです。

 被害者はいまも救済を求めて裁判を闘っています。

 日本共産党の国会議員団は昨年10月、環境相に▽被害者と直接会い声を聞く▽解決のテーブルにつく▽切り捨て政策を改める―ことを要請しました。今国会でも、直接声を聞くよう求めてきました。

 9日の参院環境委員会で伊藤環境相は共産党の山下芳生議員に、未認定の人が多くいると認めながら、現行法の枠内で対応する姿勢を示しました。山下氏は、それでは救済にならないとして、大臣として責任を果たし、新たな枠組みづくりのテーブルにつくよう要求しました。「聞く力」を標榜(ひょうぼう)する岸田文雄政権は被害者の声に応え、ただちに救済に踏み出すべきです。


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